全国で相次ぐ特殊詐欺にインターネット回線を利用した「IP電話」が悪用されるケースが近年目立っている。かつて犯罪に使われた携帯電話などは対策が進んでいるが、IP電話は特別な機器や工事もなく導入でき、転売も簡単。規制や対策が追いついていないのが実情だ。
IP電話は、インターネットのデータ通信技術を使って音声をやり取りする電話サービス。総務省から番号を付与された大手通信会社などが回線を販売し、「03」「06」といった市外局番で始まる「0ABJ(ゼロエービージェイ)型」と、番号が「050」で始まる「050型」の2種類がある。電話線を引かなくてもスマートフォンなどがあれば安価に導入できるのが特徴で、利用が広まっている。
このIP電話が近年、特殊詐欺に悪用されるケースが目立っている。福岡、秋田、岡山、青森の4県警の合同捜査本部は9月下旬、IP電話回線を再販する通信事業者「ボイスオーバー」(東京都新宿区)の代表取締役らを組織犯罪処罰法違反容疑で摘発したが、同社が販売した回線は全国の特殊詐欺に使われており、被害は2013~21年に全国で約4600件、被害総額は80億円にのぼるとみられるという。
捜査関係者によると、詐欺グループにIP電話回線を売る業者は「道具屋」と呼ばれ、ボイスオーバーは国内有数の道具屋の一つとして警察が把握していた。
IP電話はなぜ、犯罪に悪用されやすいのか。
高齢者宅などに詐欺の電話が…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル